倒産と孤独、社長と孤独
社長とは孤独ですね。
もちろん、会社では社員がいて、役員がいて、表面上は孤独ではありませんが、会社を背負うという面では孤独です。業績が悪化すれば役員も必死に会社の事を考え、頑張りますが、でもほとんどの中小零細企業の場合は全ての債務は社長一人が背負っていますので、最後の最後は自分1人が全ての責任を負います。
極端な話、社長以外は役員であっても、銀行融資の連帯保証人にでもなってない限りは、会社が無くなっても転職して終わりです。今まで働いていた会社が倒産すると、転職活動大変だな、、、とはなりますが、当たり前ですが個人資産が取られる訳でもなく、お給料はある程度保証され、雇用保険も支給され、転職してすぐに通常の生活に戻ります。
一方社長は、会社倒産、個人自己破産、自己所有であれば住む場所も取られ、車も取られ、生命保険の積立分も無くなり、資産が全て無くなり、お給料も無くなり、雇用保険もなく、その状態でしばらくの期間は破産準備、裁判が続きます。
完全に出口が違い、倒産に対する深刻さの度合いが違いますので、どんなに社長に近いポジションの役員であっても、本当のところで分かりあえる事はありません。これはその役員が悪いのではなく、仕方ない仕組みです。
もしもその側近が過去に会社を経営していれば、そこは理解し合える可能性はあります。その側近が倒産を経験していれば、かなり理解し合えるでしょう。逆にその経験や知識は相当助けてくれるでしょうが、稀なケースでしょう。
倒産の過程においては、この孤独との戦いはある程度覚悟が必要になります
社長同士のつながり
社長が社長同士の会などに参加するのも、もしかしたら同じ境遇のポジションの人となら、分かりあえる部分が多いからかもしれませんね。私も社長同士の会に参加してましたし、取引先の社長とも交流を多く持っていました。
周りも皆、社長ですので、話の通ずる部分は多く、事業の相談、従業員についての相談、話題、雑談など、他の社長の考えを聞く事は勉強になります。サラリーマン同士が居酒屋で会社の悪口で盛り上がるのと似てるのかもしれませんね。
ところが、いざ会社が傾いてくると、そういった会にも足が遠のいてきます。社長の集りに行けば、景気の良い話があっちこっちから聞こえてきます。資金繰りで悩んでいるところに、そういった景気の良い話や、前向きな話など、聞いていると辛くなってきますね。
多少右下がりで行き詰まってるぐらいでしたら、それらの話が励みになったり、現状を相談したりも出来ますが、でも1人景気の悪い話をして雰囲気を悪くしてしまったり、私の場合は周りは割と若く成功している成功者も多かったので、いわゆる挫折とか、会社が傾いた時にどう耐え、どう盛り返すかなど、そういった経験がない人に聞いたところで参考になる答えは皆無でした。そして、本当に傾いてくると参加も厳しくなってきます。
今まで定期的に会食をするような取引先の社長も多くおりましたが、取引先ゆえに景気の悪い話はしずらいです。取引を再検討されても困りますし、その話が同じ業界に広まっても困ります。むしろ、こちらの状況を悟られないように接しながら、逆に受注を増やさなければいけない状況ですので、、、
相談先は、、、
社内では現状良くないという事実はある程度伝えながら、社員を奮起させながら、上層部とは綿密な再建計画を練りながら、社外では取引先とは良好な関係を継続しつつ接しながら、、、最終は自分自身で1つ1つYES、NOを判断しながら舵を取っていくしかありません。
そして、孤独になりながら、1人考え込む時間が増えていってしまいます。ただし、考えていても解決しませんので、行動に早く移す事が大切です。従業員を減らすなら減らすなど、決断としてはとても難しいですが、「やばいな」と思ったらすぐ行動しないと、どんどん状況は悪くなります。3カ月、半年と時が経てば経つほど手遅れになってしまいます。
そんな時、現状を全て理解して考えてくれるコンサル的な人がいると良かったと思います。知人社長や取引先社長には相談は難しいですので、専門コンサル会社や、倒産経験者のアドバイスがあれば良かったと思います。当時、専門コンサル会社へも相談はしてましたが、本格的なサポートとなると毎月30万以上のコンサル料が必要だったため、その金額を捻出する事は出来ませんでした。定期的なセミナーに行ったり、顧問契約の営業に来られた時に、軽く現状を話して相談するぐらいですね。
あの時、誰かに相談出来ていれば、とは今思えばです。
もちろん、相談した答えをそのまま実行するかは当時の自分の判断ですが、相談して得られる様々な回答、選択肢を知る事は、当時の自分にとって必要だったと思います。
もちろん、相談した答えをそのまま実行するかは当時の自分の判断ですが、相談して得られる様々な回答、選択肢を知る事は、当時の自分にとって必要だったと思います。
弁護士介入後の孤独
時は流れ、いよいよ倒産が近づくと、弁護士介入となり、裁判所へ正式な破産申請の手続きとなります。倒産の過程で未払い発生や、従業員解雇などをしている場合もあると思いますが、従業員も取引先も、全て自分を攻めにきます。全て自分で対応しなければならず、大変ではありますが、最終弁護士介入になれば、全て弁護士の先生が窓口になってくれます。電話一本来なくなります。
ここからしばらくは、会社をたたむ準備に入ります。現状の債権者の整理や債権額の集計、取引先の事、自分自身の資産、やる事がすごい多いです。もはや従業員もおらず、自分1人でやるしかない状況です。今まで通っていた事務所は解約してないですし、社員もおらず、電話すら(弁護士介入後ですので)1本もかかって来ません。
完全に社会から除外された感じを受けます。この孤独感は大きいです。元従業員は転職活動して新しい会社へ入社、もう完全に他人で交わりは無くなります。取引先も法的に一切の連絡が途絶えます。倒産において辛い事は色々ありましたが、やはり「孤独」という辛さは別物だった気がします。
ただし、やがて必ず孤独から解放される日が来ます。ある程度、裁判が進んで目途が立つと、弁護士から「再就職していいですよ」と言われました。そして、転職活動を開始すると、色々な人との接触が再開します。正直、転職活動をしてしばらくは、人と話す事が久しぶりなので、ややぎこちなかったです、、、
もちろん、定期的に弁護士と話したり、家族や、友人と話す事はありましたが、今まで毎日会社に通い、従業員と話し、取引先と話し、などの生活から一変してほぼ外部との交流が断たれていましたので、、、
転職活動については、別のブログで過去に書きましたので参考にしてください。
そして転職が決まり、会社に通いだすと、そこでやっと孤独から解放されました。なんでしょう、社会から隔離されていた自分が、社会に戻れたという表現でしょうか、、、
そして転職が決まり、会社に通いだすと、そこでやっと孤独から解放されました。なんでしょう、社会から隔離されていた自分が、社会に戻れたという表現でしょうか、、、
あれから二年以上たちましたが、今は新しいコミュニティーの中に自分という存在があり、社会の1つの歯車として生活しています。幸い家族もそのまま、昔の従業員と飲む機会もありますし、以前迷惑をかけた取引先の方とも、一部、交流を再開しています。
ウォルト・ディズニーも何度も自己破産を経験して立ち直ったという話も有名ですが、会社倒産、自己破産は決して終わりではないという事は、事前に知識としてある程度知っておいた方が良いと思います。また倒産という見えないものへ向かっていく事が不安を大きくさせますので、倒産とは何か、具体的にどういう過程があるのかなど、知っておく事で大分気持ちも楽になると思います。
いざ破産となると、辛い事も多くて行き詰まってしまいますが、やはり知識として色々な事を事前に知っておく事で、「今、辛いのは、あの時に聞いていたあの段階か、ここを過ぎれば次は・・・」と自分が今いる過程を自分で把握出来ます。そして、その後の過程も知っておく事で、頑張れると思います。
知識は糧となるでしょう。このブログがそのお役に立てていれば幸いです。
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